大使挨拶
令和7年12月9日
2025年(令和7年)12月吉日
こんにちは。駐マダガスカル兼コモロ大使の戸島仁嗣と申します。
この度、前任の阿部大使やこれまでの大使が築き上げた基盤を引き継ぎ、マダガスカル及びコモロにおいて、日本との関係強化に貢献する機会をいただいたことを大変光栄に思います。
皆様におかれましては、平素より日本と両国の友好関係の発展にご理解とご協力を賜り、心より感謝申し上げます。
マダガスカルと聞いて多くの方がイメージされるのは、バオバブの木やキツネザルといった独特の自然ではないでしょうか。しかし、私が実際に着任し、首都アンタナナリボのある中央高地に足を踏み入れると、広大な水田が広がる風景に、まるでアジアの国にいるかのような親近感を覚えました。マダガスカルの人々が日に三度米を食し、国を挙げて米の自給を目指していることも、同じ稲作文化を持つ日本との深いつながりを象徴しています。長年にわたる日本の稲作技術協力が、この国の人々の暮らしと食料安全保障に貢献してきた実績は、私も深く認識し、その重要性を改めて感じております。
マダガスカルは日本の約1.6倍という広大な国土を有し、豊かな天然資源に恵まれています。リチウム電池などの生産に不可欠なニッケルやコバルトを生産・精錬するアンバトビー・プロジェクトは、我が国企業が筆頭株主として深く関与しており、マダガスカル経済を支える重要な柱となっています。また、同プロジェクトの物流拠点として我が国が協力している「トアマシナ港拡張計画」も、経済インフラ開発の強化という観点から、マダガスカルの経済発展に欠かせない重要な取り組みとなっています。これらは、我が国が1993年以来主導しているTICAD(アフリカ開発会議)が提唱する「官民の力を結集した開発援助と貿易・投資の促進」という開発の理念をまさに体現するものです。
豊かな国土と自然や資源に恵まれ、高い発展可能性を秘めているにもかかわらず、マダガスカルが未だ世界の最貧国の一つに留まっている現状は、国際社会にとっても克服すべき喫緊の課題であると認識しています。この国が真のテイクオフを果たすためには、ガバナンスの強化と政治の安定が極めて重要です。最近、若年層を中心とした抗議活動を受けて旧政権が退陣し、暫定政権が発足するという重要な事案が発生しました。日本としては、国際社会とも協調しつつ、よりよい国家を目指すマダガスカル国民と政府の取り組みを後押しできればと考えています。
一方で、近年、マダガスカルの潜在力に注目し、進出や取引を検討する日本企業が増えています。大使館といたしましては、当地に進出している、または新たに参入を検討する日本企業の方々に対し、情報提供や調整・提案等、円滑に企業活動を展開していくための支援を、個別の状況に合わせ、丁寧に行っていきたいと考えております。ご関心をお持ちの皆様は、どうぞお気軽に大使館へお問い合わせください。
マダガスカルの人々は総じて勤勉で真面目であり、その潜在能力を最大限に引き出すためにも、良き政治的リーダーシップの下、自助努力を継続していかれることを期待しています。
日本は、マダガスカル国民の皆様のこうした努力を最大限に支援し、ともに未来を切り拓くパートナーであり続けたいと考えています。
コモロについても一言申し上げます。マダガスカルの北西に位置する美しい島々からなるコモロは、日本と同様に海洋国家であり、火山列島であること、米を主食とすることなど、多くの共通点を持つとともに、インド洋地域の平和と安定、経済的繁栄において、重要な役割を果たしています。
また、最近では二国間の交流も着実に強化されています。2025年8月にはアザリ大統領が第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)へ出席するために訪日されたほか、ムストファ経済・産業・投資大臣も関西・大阪万博のコモロ・ナショナルデーに参加するため訪日し、コモロの文化や経済を広く紹介されました。我が国としては、こうした交流の進展を踏まえつつ、水産分野や人材育成など、日本の強みを生かした協力を通じて、コモロの持続可能な発展を引き続き支援してまいります。
こうした状況も踏まえつつ、大使館としましては、在留邦人の皆様の安全確保と、質の高い領事サービスの提供に引き続き全力を尽くして参ります。また、マダガスカルとコモロにおける日本への理解を深め、両国との友好親善関係をさらに増進させるべく、スタッフ一同、誠心誠意努めてまいる所存です。
皆様のご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
戸島 仁嗣
駐マダガスカル・コモロ日本国特命全権大使