保健・医療事情

衛生・医療事情一般

マダガスカルはアフリカ大陸の東400Km のインド洋に位置し、面積は日本の1.6 倍の島国です。インドネシア等東南アジア島嶼部からの人々が移り住んだのがマダガスカルの始まりと言われています。その後アフリカ大陸東部から渡った人々と混血したと考えられています。1900 年には約200 万だった人口が2008 年には1900 万人(世界銀行統計)に達し、1世紀で10 倍近くになり、貧困が大きな問題となっています。首都アンタナナリボは人口約190 万人の大都会ですが、下水道などインフラ整備が進んでおらず、汚染された地域が各所に見られ、衛生面では十分な注意が必要です。また街中ではスリ・置き引き・泥棒などが日常茶飯事に起きていますので常に身の回りに注意を払って下さい。また政情不安による経済・社会事情の悪化により失業も増えているため、夜間には武器を携えた強盗事件もしばしば発生していますので、夜間の不要不急の外出は控えるようにして下さい。


気候に関しては、乾季(4月~10月)と雨季(11月~3月)に分かれ、雨季の中でも12月~2月は暴風雨(サイクロン)の来襲が多く、しばしば水害が発生します。島の気候は、東海岸・中央高地・西海岸の3地帯で異なります。東海岸地域では通年高温多湿の熱帯性気候でマラリアの発生も高頻度です。首都のある中央高地は涼しく、マラリアの発生は稀です。西海岸地域は、乾季は温暖・乾燥ですが、雨季は高温多湿でマラリアも多く発生しています。


マダガスカルの医療水準は低く、病院の診断機器や治療器具も不十分で、CTは国内に2台しかないうえ、正常に稼働していない場合が多く見受けられます。重症の病気や重傷のケガでは、初期治療は当地で受けるにしても、より高度な治療を要する場合は国外への航空移送を考慮した方がよいでしょう。従って当地を旅行する方は、海外旅行傷害保険への加入が必須です。首都アンタナナリボ市内には比較的設備の整った私立病院がありますが、日本のような行き届いた診療やこまやかな看護は期待できません。また、マダガスカル語と仏語以外は通じないのが一般的です。また私立病院では入院に先立って50ユーロ程度のデポジットを要求されることが普通です。公立病院は安価で受診できますが、設備が整っておらず診療レベルも低いので、緊急時以外邦人の利用はお勧めできません。首都アンタナナリボなど大都市では上水道は整備されていますが、病原菌はいないものの水質は悪く、雨季には褐色に汚濁することもあって、飲用には適していません。煮沸して飲むか、市販のボトル詰め飲料水を使用して下さい。当国の食品衛生管理は十分には行われていません。また現地の人向けのマーケットで売られている食肉には違法に屠殺された牛・豚も多いので、食事は清潔なレストランを利用し、食材の購入は信頼のおける店かスーパーで行うことをお勧めします。
マダガスカルは自然の豊かな国と思われがちですが、現実には首都の大気汚染が深刻な問題となっており、慢性の咳など呼吸器疾患に悩む人が少なくありません。喘息などの慢性疾患をお持ちの方は常用薬を必ず持参して下さい。

 

かかり易い病気・怪我

(1) 交通外傷:首都アンタナナリボの道路事情は非常に悪く、狭い道路に歩行者、荷車が行き交う中、車が溢れ、坂道が多く、正確な市街地図も存在しません。車の行き交う道路の真ん中で、物乞いが小銭をせびり、物売りが寄ってくる状況ですので、初めて訪れる人が自分で運転することは極めて危険です。車道と歩道の区別は殆どないことに加え、当地は厳然たる「車優先社会」ですので、そのつもりで歩行して下さい。歩行中の転倒は致命傷になりかねないので歩行をする場合には充分注意が必要です。市内に交通信号機はありませんので、道路の横断には十分注意が必要です。横断歩道を歩いても、車が止まってくれるとは限りません。特に小型乗合バスとタクシーの運転は乱暴ですので、気を付けて下さい。


(2) 食中毒・急性胃腸炎:下痢・腹痛はマダガスカルで最も遭遇しやすい病気です。細菌性のものとウィルス性のものとありますが、多くは数日間症状が続きやがて軽快します。症状が1週間以上続く場合や高熱を伴うときは医師の診察が必要です。汚染されていない食材でも、調理人やウェイターの手が不潔なこともあり得ます。(当国の人々にはトイレの後、手洗いする習慣は一般的ではありません。)予防法としては、十分に加熱調理された物を食べること、路上で売っている屋台の食物は避けること、皮を剥かない果実(イチゴ等)は口にしないこと、等です。


(3) マラリア:マラリアの発生は東海岸では通年、北・西海岸では雨季にみられています。近年、中央高地では屋内殺虫剤散布が奏功しマラリア症例数は激減しており、1988 年以来流行は見られていません。当国のマラリアは重症型の熱帯熱マラリアが90%を占め、初期に適切な治療が行わなければ貧血、腎不全、内出血などの他に脳障害によって死亡することもあり「悪性マラリア」と呼ばれています。熱が出たら病院で早期にマラリア検査を受ける必要があります。マラリア予防薬としてはMefloquine(日本では商品名メファキンSS、当地ではLariam の名で市販)を現地入りする前から週1回1錠内服し、現地を去ってからも4週間継続します。沿岸部や低地森林部に10日間以上滞在するときは予防内服を勧めます。
(4) AIDS・性感染症:当国のHIV 感染率は1%未満であり(保険家族計画省性感染症・エイズ対策課)、また妊婦検診でのHIV 陽性率も0.95%(WHO2009 年版国別資料)とアフリカ諸国では低い方です。性感染症(梅毒など)はフォール・ドーファンなど港町で蔓延しています。ご注意下さい。


(5) ペスト:マダガスカルは世界有数のペスト汚染国で、2009 年の統計によれば、年間96 名の感染が確認され、20 名が死亡しています。中央高地の農村を中心に、冬(乾季)である7~11 月に流行する傾向があります。しかし鼠のはびこる貧民街で生活しない限り、通常の邦人旅行者が罹患する可能性は少ないと思われます。


(6) 狂犬病:首都の犬は殆ど放し飼いであり、地方でも野犬があちこちにたむろしており、犬に咬まれる危険性は高い土地柄です。野犬やキツネザルを含む野生動物からの狂犬病ウイルス検出例は多いのですが、動物の感染率は調査されておらず詳細不明ですので、野生動物にはむやみに近づかない方が賢明です。動物咬傷により曝露後免疫を受けた者は、保健省緊急事態・感染症対策局によれば年間1500 人程度ですが、実際にワクチン投与を行っているマダガスカル・パスツール研究所によれば4500人に上るといわれ、数値に乖離があります。首都のパスツール研究所内の狂犬病センターでは暴露後ワクチン接種が土日も含めて可能です。


(7) その他の疾患:上下水道の設備の不十分な農村地帯や、貧困層の住む地域では、A型肝炎・細菌性赤痢・腸チフスの発生も見られます。生ものの摂取には十分注意しましょう。また乳幼児を中心に髄膜炎も多く発生しています。Hib(インフルエンザ菌b 型)ワクチン接種をお勧めします。

 

健康上心掛ける事

(1) 食事・飲料水:路上の屋台など衛生状態の悪い場所では食事は控えて下さい。野菜や果物は良く洗い、肉類や魚類は必ず火を通してから食べて下さい。飲料には市販のミネラルウォーターを購入して下さい。


(2) 熱中症・日焼け:夏の日差しは強く、長時間屋外にいる時は日焼け止めを塗るなど日焼け対策と共に、水分、塩分を補給する熱中症対策も必要です。


(3) 蚊対策:マラリアを媒介するハマダラ蚊に刺されないよう、日暮れ以降は長袖・長ズボンで行動し、蚊よけスプレーやクリームを必要に応じて使用して下さい。就眠時に蚊取り線香と蚊帳を用いて下さい。


(4) 地方では、バオバブの樹、愛嬌ある野生のサル、多種のカメレオンなどマダガスカルならではの自然に出会える魅力がありますが、首都アンタナナリボは治安上の問題から夜間外出は控える事が望ましく、かつ娯楽に乏しい土地柄、長期滞在する場合メンタルヘルスの維持への配慮が必要です。運動不足やアルコール過剰摂取にも気を付ける必要があります。

 

予防接種

(1) 赴任者に必要な予防接種:入国時に必須の予防接種はありませんが、成人・学童児はA型肝炎、B型肝炎、破傷風の予防接種を受けてくることを勧めます。乳幼児は日本の定期予防接種及びHib の予防接種を受けてくることを勧めます。


(2) 現地の小児定期予防接種一覧
ワクチン 初回投与 2回目 3回目
BCG 出生時
DPT 生後6週 10 週 14 週
B型肝炎 生後6週 10 週 14 週
ポリオ(生ワク) 出生時 6 週 10 週
麻疹 生後9月
インフルエンザB
(任意接種)
生後6 週 10 週 14 週

 

(3) こどもが現地校に入学・入園の際必要な予防接種・接種証明
フランス学校入学には、BCG とDPT の接種証明を求められます。
アメリカンスクールでも、ポリオ、DPT、MMR、BCG、HB の接種証明が求められます。
未施行の予防接種は当地でも接種可能ですが、可能な限り日本で済ませて来る事をお勧めします。

 

乳児健診

乳児健診はマダガスカル人乳児を対象に行われています。月に一度の助産師による健診があり、身長・体重の測定や第7項にあげたワクチンの接種をします。異常があれば小児科医が診察します。健診場所は通常はその児が生まれた病院で、病院出産でなかった場合は政府系公立病院小児科で行います。費用は無料です。ただし、この健診はマダガスカル国籍を持つ乳児が対象ですので、日本人が受けることは殆どありません。

 

簡単な医療フランス語とマダガスカル語

日本語 仏語 マダガスカル語
医師 Docteur Dokotera (ドゥクテラー)
飲み薬 Un méicament àboire Fanafody fisotro(ファナフィディ フィストロ)
注射 Une piqûe Tsidrona (チドゥナ)
頭痛がする J'ai mal àla têe. Marary ny lohako.(マラリ ニ ロハク)
胸痛がする J'ai mal àla poitrine. Marary ny tratrako.(マラリ ニ チャチャク)
腹痛がする J'ai mal au ventre. Marary ny kiboko(マラリ ニ キボコ)
下痢 Diarrhé Fivalanana(フィバラナナ)
発熱 Fière Misy fanaviana(ミシ ファナビアナ)
吐き気がする J'ai envie de vomir. Te hadoa aho.(テ ハドゥ アホ)
ケガ(傷) La blessure Ratra (ラチャ)
具合が悪い Je me sens malade. Marary aho (マラリ アホ)
病院へ連れて行って下さい Pourriez-vous m'emmeneràl'hôital ? Eto any amny hopitaly aho. (エト アニアミニ ホピタリ アホ)
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